登山をこれからはじめたいと思っている人や始めたばかりの人が何も知らずに山を登ってしまい、低山にもかかわらず下山の時には疲れて果てて足も上がらないという経験をされた方も中にはいるのではないでしょうか?実は、登山には疲れにくい山歩きのコツがあるんです。歩き方や休憩の取り方などを抑えるだけで、脚の負担や体の疲れ具合が大きく変わってきます。ぜひ参考にしてみて下さい。
登山の歩き方は大事!【基本】疲れない歩き方のコツを覚えよう

山登りで大切なのが、歩き方です。登山での初心者あるあるが、最初に飛ばして後でバテてしまうこと。山での歩き方には、姿勢や休憩の取り方、ペース配分などいくつか知っておきたいコツがあります。
山の歩き方をしっかりと身につければ疲れにくくなり、登山・ハイキングを快適に楽しむことができます。「体力がないから」と登山・ハイキングを諦めてしまう前に、歩くペースや歩き方を見直してみましょう!
心身を万全にしてから出発しよう
準備8割という格言は、登山・ハイキングにも当てはまります。当日の天候のチェックや自分の体調管理はもちろん、登山地図や案内板で歩くコースの確認を事前に行いましょう。
また、靴ヒモがしっかり結ばれているかもチェックします。山歩きでは靴ヒモが緩いと歩きづらく、靴ズレの原因になります。家を出るときに結んだとしても、登り始める前に靴ヒモの締め具合やフック最上段の掛け方などをもう一度チェックしましょう。
ザックにパッキングした中身もチェックし、もしもの時に必要なものを忘れていないか確認してください。ケガの予防のため準備体操を必ず行い、筋肉をほぐしておくことも忘れずに。
ゆっくりペースで呼吸に注意しよう
ハアハアと息が上がりながら山を登っている方をたまに見かけますが、呼吸が乱れたまま登ると酸素不足になって疲れる原因になります。そのままの状態が続くと疲労が蓄積され、最悪の場合は途中で動けなくなる可能性もあります。
登りはゆっくりと登るよう心がけ、呼吸が乱れたときはペースを落とすようにします。また、呼吸をおろそかにせず、息を吐いて吸うことを常に意識しながら歩くようにしましょう。
運動負荷が高い登りの場面では、体幹を安定させて、力を発揮できるようにすることが大切です。お腹にしっかりと力が入るように息を吐くことを心がけながら、お腹を凹ませるのではなく、腹圧を高めるように意識して呼吸します。コツとしては息を吐くときに、長く吐くよりも短く吐くとお腹に力が入りやすくなるためおすすめです。
ジグザク歩行をしよう

Photo by 日本山歩きクエスト
斜面をまっすぐ登っていると、体勢が変わらず同じ筋肉を使い続けるため、すぐに限界に達して疲れやすくなります。適度に休憩を入れると長く動き続けることができるのですが、この特性を利用した歩き方がジグザグ登りです。
ジグザグと縫うように斜面を登ると、歩く距離は長くなりますが、歩く傾斜が緩くなります。傾斜が緩くなると、持久力があり疲れにくい「遅筋」と呼ばれる筋肉が使われます。遅筋は大きな力を生み出すことはできませんが、マラソンなど長い時間を走ることを要求されるような運動の時に力を発揮します。
登山は長時間に渡り、坂道を登ったり下ったりすることが求められるため、マラソンと同じように遅筋を上手に使うことで、疲れにくく長い時間を安定させて歩くことができます。また、体を左右に振るたびに使う筋肉が微妙に変わり、あまり使わない側の筋肉を休ませることもできます。
トレッキングポールを使って疲れを軽減しよう
登山中に、両手にスキーのストックのようなもなものを持っている人に出会ったことはありませんか?あれはトレッキングポール、またはストックと呼ばれる登山道具の1つで、起伏のある長い道のりを歩く時に、身体の負担や疲労を軽減して、より安全に登山・ハイキングを楽しむための杖です。
足場が不安定な登山道や滑りやすい斜面では、転倒リスクが高くなります。トレッキングポールを使用することで、思わぬ転倒のリスクを減らすことができます。登りと下りでは、使い方と役割が若干異なります。
登り
上半身の力を利用して推進力を得ることで足だけで登るよりも楽に登ることができ、足腰にかかる負荷が軽減されるため疲労の蓄積を和らげられます。
下り
下りは、自分の体重に応じて、荷物以上の負荷が片足にかかることになります。気をつけないと、着地時の衝撃がひざ・腰の疲労と痛みに直結します。トレッキングポールを使用すれば、上半身の力を利用して衝撃の緩和や疲労の蓄積を緩和することができます。
登山の歩き方は大事!【登り】疲れない歩き方のコツを覚えよう

せっかく休日を利用してリフレッシュするために山に出かけたのに、翌日に疲労困憊でヘトヘトの状態で仕事に行きたくないですよね。長時間歩き続ける登山やハイキングでは、疲れにくい歩き方を身につけておくことはとても大切です。
ここからは、長時間歩いても疲れない登りの歩き方のコツをご紹介します。快適、安全に登山・ハイキングをたのしむためにもぜひマスターしてくださいね。
歩き方のコツは、基本姿勢が大事
まず、どのような姿勢で山を登るのがよいのか見てみましょう。山での歩き方の基本姿勢は、頭から背中にまっすぐ一直線になるような姿勢です。この姿勢だと、ザックなどを筋肉を使わず骨で支えることができるため疲れにくくなります。
この歩き方では、前に出す足を上げた瞬間に体が一直線になります。踏み込む足に、徐々に体の重心を移動させるイメージで歩いてみましょう。残った方の足のみで体重を支えることになりますが、慣れてくると体勢が安定し、バランスがとりやすくなります。
正しい姿勢を保っていても、長時間歩いていると疲れてきます。登山初心者やヘトヘトになった登山者は、猫背でうつむきながらの歩行になりやすいので注意してください。猫背の状態で歩いていると余計な筋肉を使ってしまい、さらに疲れます。しっかりと顔を上げ、まっすぐな姿勢を意識して登るようにしましょう。
歩幅は小さく重心を移動しながらゆっくり歩こう
傾斜が多い登山道をいつもと同じように歩くと、すぐに疲れてしまいます。傾斜のある坂道を登るときには、小さい歩幅で歩くのがコツです。小さい歩幅で歩くことでバランスがとれやすく、疲れにくくなります。
歩幅の基準は山の斜面によって異なりますが、おおよそ靴一足分以内の間隔が基本です。はじめはこんなに小さいの?と感じますが、この歩幅を意識して登ると長時間歩いても疲れにくく、疲労感がまったく違うでしょう。
また、体で一直線をつくり、その状態から重心の移動によって進むことも大切です。こうすることで余分な筋肉を使わず、バランス良く楽に歩くことができます。
着地は足裏全体を意識しよう

山を快適に歩く方法に、フラットフィッティングという歩き方があります。フラットフィッティングとは、いわゆる、「べた足」のことです。靴底のつま先とかかとを同時に地面に着地させ、つま先とかかとを同時に地面から離す歩き方です。
登山中でありがちなのが、つま先で登ってしまうことです。つま先ばかりで登ると、ふくらはぎに過度な負担がかかって疲れるだけでなく、滑りやすくなります。靴底全体を地面に着地させることを意識して歩くことで、疲れにくくなるだけではなく、登山靴のソールのフリクションが地面に食い込むので滑りにくく安全に歩けます。
急斜面は足を外側に開きながら登ろう
急斜面を登る際に足を平行にして歩くと、斜面の角度に合わせて足首を曲げなければならないので、足首やふくらはぎに負担がかかります。それを防ぐために大切なのが「ガニ股歩き」です。足を外側に開きながら歩くことで足首とふくらはぎの負担を緩和することができるので、急な坂道では小さい歩幅と足裏全体で着地すること、そして、つま先を外側に向けたガニ股歩きがポイントです。足から足へ体重を移動していきながら、ゆっくり進みましょう。
登山の歩き方は大事!【下り】疲れない歩き方のコツを覚えよう

下りは、登りより楽。そんなイメージはありませんか?登りは息が上がりそうになりますし、キツいイメージがあるのも無理はありません。しかし、実は、下りの方が身体への負担が大きいってご存じでしたか?下りで腰や膝が痛くなって楽しいハイキングが台無しにならないよう、下りの歩き方もマスターしておきましょう!
膝に負担がかからないようにしよう
下山時に膝が痛くなるという経験をしたことはありませんか?前述したとおり、下りは、登りよりもエネルギー消費が少なく楽なイメージがあるかもしれませんが、ケガや事故が多いのは下りなんです。登りの歩き方も大切ですが、気を付けたいのは、登りよりも下りです。
下りでは、足にかかる衝撃が大きくなるうえ、すでに疲労が蓄積していることで注意力が低下しやすくなります。そのため、障害物に対して注意が散漫になったり、気付かぬうちにスピードが出てしまったりするなど、さまざまなリスクが発生します。
下りの際には、やや前傾姿勢で一歩一歩確実に足を着地させながら、身体よりも足が先に出てしまわないように、重心が地面と平行になるようなイメージで歩くことを意識してください。トレッキングポールを利用するのもおすすめです。転倒の防止や、身体への負担を軽減してくれるので積極的に活用しましょう。また、完全に疲れ切る前に、適度な休憩も取り入れましょう。
転倒を防ぐために速度と歩幅に注意しよう
下り坂は体が前のめりになり、バランスが不安定になりがちです。転倒も起こりやすく、思わぬ事故になりかねないので注意が必要です。
基本的には登りと同じように小さい歩幅を維持しながらフラットフィッティングで着地し、頭から脚まで一直線の線をイメージして、ゆっくり体重を移行しながら下ります。下りでは足首への負担が比較的少ないため、進行方向を向いて下りていけばOKです。
着地の際、ドスンと勢いよく着地してしまうと膝を痛めるリスクがあります。安全に着地するためには、前の脚が地面に着地した時はまだ後ろ足に重心を残し、少しずつ重心を前の脚に移動しましょう。これだけで膝への負担がかなり軽減されるはずです。
また、斜面を下るときには恐怖心から腰が引けてしまいがちです。腰が引けていると体の軸が地面と垂直ではなくなり、スリップしやすくなり危険です。怖がって腰を引かないよう、意識しましょう。急斜面を下りるときのコツは、腰を落としてやや前かがみになり、体の軸を地面とできるだけ垂直にします。あせらず、歩幅をかなり小さくすれば、安定して下れます。
段差は、横向きで降りよう

下りの際、段差のときには進行方向に対して横を向きながら、一歩一歩確実に下りていきます。両ひざを軽く曲げながら、軸足の太ももの上に両手を置き、その手で体を支えながら、もう一方の足をゆっくり下へ移動させて着地させます。
この時、足の向きを斜面に対して横向きのままにしておいてください。前へ向いていると、足首を痛め転倒の原因になる可能性があります。大きな段差がある場合はできるだけ避けることが第一優先ですが、回避できない場合には横を向いて弾みをつけずに、衝撃を緩和しながらゆっくりと下りましょう。山足(軸足)から谷足に重心を移動する時、この方法を使えば水平方向への移動が最小限で済み、安定して段差を下ることができます。
疲れない歩き方のコツをマスターし登山を満喫しよう!
安全、快適に登山・ハイキングを楽しむためのコツは、いかがでしたか?登山道は凸凹していたり、アップダウンがあったり、滑りやすかったりと、街中とは違う過酷な道を長時間歩きます。そんな状況でも多くの方が途中でリタイアすることなく登山を楽しむことができている秘密は、山特有の歩き方にありました。登山は何歳になってもできるアウトドアレジャーです。ぜひ、上手な山の歩き方を身につけて、楽しい登山・ハイキングライフを手にいれてください。

筆者プロフィール:中土 剛志
株式会社センターグローブ代表。 SEOや記事制作の仕事に携わりながら、登山をライフワークとして楽しんでいます。
「日本山歩きのクエスト」は、登山やハイキングをもっと気軽に楽しんでほしいという思いから、自身の体験をもとに立ち上げたサイトです。
月に一度は山に足を運び、これまでに富士山や剣岳といった名峰にも挑戦してきました。
はじめて山歩きに挑戦する方にもやさしく紹介していますので、参考にして頂けますと嬉しいです。